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三俣山荘六十周年祭にあたって
今を遡ること昭和20年頃は、終戦直後の荒んだ時代であった。
町では食べ物を求め、家を求め、失った何かを求めて人々が溢れ、喪失感からくる無気力な人々がさ迷ってる頃、アルプス、ここ黒部源流では、クマやウサギが飛び跳ね、岩魚は澄んだ水の中で鱗を光らせ群れていた。
三千メートルという高度は、人の世とはあまりにもかけ離れていた。
三俣蓮華小屋は、住む人もなく、荒れ果て、山人が山々を駆け巡っている時代でもあった。
そんな時ふとしたきっかけで、この山小屋を経営することとなる。
そこから始まる三俣山荘60年の歴史。
そして、それは正に北アルプスの夜明けと言われる時代であった。
美しくも厳しい山岳、心ある山人たちとの出会い、すでにあった小屋主との係り、川を堰き止める無惨なダムの姿、自分自身との戦い…。
源流の山々は、それら全てを懐に抱え、 黒部川は今なお、流れ続けている。
歴史を遡るということ、それは山麓から山道を一歩登るのと同じこと。
頂きが見えた時、私達はもっともっと深みのある黒部源流が眺められるにちがいない。
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